「あ〜ぁ、またか…。」あきらめる瞬間……。

IMGP1487_2ご覧のこの感じ、昨今のライブハウス等でキックのマイキングはほぼ90%はこの手。小さな穴にAKG D112等の所謂キックに向いてるよ的マイクでフタをするようなこれ……。

別に間違ってはいないけどよ、これ。簡単に言うとロック向きなんだな、このマイキングは。ズンタンドドタンの8ビート仕様なんだよ。

バスドラのフロントに小さな穴だとぜんじろう先生の空気砲よろしくかなりの勢いで風が出て来る。
そこにマイクを立てている訳だから拾っているのは打音と言うより風の音だ。マイクに息を吹きかけた時の「ブゥオー」ってあれね。確かにこのマイキングだと「ドスゥゥゥーン」というディケイが長いローエンドの固まりのような音に成る。imgp6033

音楽の種類によってキックとベースの定位関係は変わって来る。多くのロックバンドはライブではキックを一番下に定位させベースは上に来る傾向を好む。と言うかハウスエンジニアのほとんどが黙っていればそうしてしまうのだけど。

確かにゴージャスな感じはする。普段はスタジオでひたすら練習してて「今夜はライブだ!やったるぜっ!」なバンドにはドォウーンってなキックがたまらなく高揚感を煽ってくれるかもしれない。

でもな、考えてみれ。キックが激しくシンコペイトしベースが細かくビートを刻む音楽に合うか?コレ。 JBビートやアースウィンド&ファイヤー、タワー・オブ・パワーが、ガンズ&ローゼスみたいなミックスで音楽として成立するか?

「もっとローをカットしてトンッってキックにして。」とオーダーするとエンジニア達はEQをいじくりだすのだがどうやってもトンッなキックには成らない。そらそうだ、だって風の音を拾っているんだもの、卓のEQで何をどうしようと打音には成らない。

毎日違うバンドをいくつも相手にしているのだから出会い頭でこっちの音に何の予備知識がないのは仕方が無いし、それは大した事じゃ無い。問題はエンジニア達の音楽的知識の狭さと対処する技術の無さだ。

一通りEQをいじくり回してどうにも思ったような音に成らず、お手上げ状態になったのを見計らい「キックのマイキング変えるね、クジラか57有る?」とベースをスタンドに掛け自ら作業に入る。

スタンドのアームが中に入るようフロント・ヘッドの穴をずらし、マイクを打面近くまで深く突っ込む。ビーターの当たる場所をやや避け、吹かないようにマイクをやや上に向けるとほとんどの場合これで解決である。ノンEQでトントンッと軽快なビートを刻むキックだ。
あとは「タムとマイクの向きが逆なのでリバースも試して良い方を選んで。」と言い渡す。

このマイキングが正解と言う訳では無く、これもひとつの方法なだけ。しかしほとんどの場合良い結果が得られるし、最初に試してみる方法だ。

そもそもリハでバンドが1発音を出した瞬間「コイツらはコレじゃダメだわ…。」と察知してリハやサウンドチェックを中断してブースからすっ飛んで来てマイキングを変えるのが本来だろう?

何処で何を学んで来たのか知らないがドカドカの音しか拾えないマイキングで全ての音楽をミックス出来ると思ってんのか?EQいじくり回せば何でも作れると思ってんのかよっ!

ほんで前も言ったけどよ、もっと音楽聴けよ!音楽の仕事してるんだから。オマエが好きなドカドカロックだけじゃ無いんだよ、音楽は。