まぁ写真が酷いのは許してくだされ。せっかく目の前で素敵な花火が夜空&湖面を染め上げているのに写真撮るのに夢中なんて愚行には出たく無いので。
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季節外れの花火大会は津久井湖のイルミネーション点灯式に合わせて開催された。
昨今何処でもLEDをじゃらじゃら飾り立て何のありがたみも無いのだが、津久井湖のイルミネーションはことさらにセンスが無く、個人宅で近所迷惑も省みずチカチカに命をかけているイルミマニア達にも遠く及ばない文化祭や学園祭に毛の生えた程度のもんである。
だが憤りを感じたのは趣味の悪いクリスマス・イルミネーションなどではなく花火の最中にどんがらどんがら流れて来る騒音の方だ。
津久井湖記念館の在る「水の苑地」にはステージが組まれ午前中から何やらイベントやら売店やら…。
地元の店舗等が出店している模擬店の区画では起振車やクレーン車等の消防・防災系の啓蒙から「よさこい」の山車(?)まで繰り出し、賑わいは結構。だがよさこいダンスの合間に入るオンマイクの女性のかけ声が「おのれはどっかの圧力団体かっ!」って勢いで、普段は1200Wでベースをドライブさせている私が耳を塞ぎたくなる痛さだ。よさこいイベントならともかく、模擬店のすぐ横でヒステリックにマイク使ってスクリームするのは止めて欲しい。
そして湖畔の特設ステージ上はまだ無人なのにサウンドチェックでもしているのかやたらハウリング(と言うよりフィードバックだな、ありゃ。)させていて「ドキャー」とか「ドヒュー」とかもの凄い勢い。野外に簡易P.A.を持ち込んであそこまでハウらせているってだけでお里が知れるってもんだ。
「どうせ通販で機材買って始めたような素人業者だろ…。」と騒々しいイベント会場を後に花火の時間まで他所で時間を潰すことに。
季節外れの花火に集まる人の数は会場に近づけないよ〜って程でも無く、静かな秋の風情に合った程々のいい感じ。
メイン会場から外れたダム側から湖上の打ち上げ筏が見下ろせる好ポジションをキープ。いよいよ花火が……はじ…ま……った……けど。
なんだ、あの騒音は!
昨今の花火はレーザー・ショーとのコラボが流行っているのかもしれないが、さっきドギャーってなハウリングを何度もやっていたあの音響屋の出す音は、いかにも「電圧足りてませーん」なレンジが狭く圧縮され歪みきった音。それならそれでもっと音量を下げてコントロール出来る範囲で再生すれば良い物を、完全に飽和しきったそれはとてもとても金を取って(ギャラ貰って)聴かすような音質では無い。しかも花火のタイミングとはまったく関係無く、のべつどんがらどんがらとキック拍打ちの曲を大音量で流している。
有料商業施設で「光と音のページェント」等と銘打ってどこぞのイベント・プランナー込みの花火ショーならともかく、歪み切った聞くに耐えない音質で肝心の花火とはまったく関係無い音楽をパブリックな場で大音量で流すってのはいったいどう言う神経だ???
紅葉に染まる湖畔の静寂を突如花火が「どっかーん!」と…。打ち上げの合間にある静寂がさらに花火の光と音を盛り上げる……はずなのに。
日本人ほど「音」に対する感性を見事に表現できる民族は他に無いと私は思っている。
歌舞伎等に見られる効果音は太鼓の叩き方ひとつで深々と降り続く雪を表現したり激しい雨や雷を演出する。鹿脅しや水琴窟、侵入者を知らせる廊下のうぐいす張りや東照宮の鳴き龍。能舞台の床下に仕込まれた反響用の巨大な壺、等々。
こんなに音を操り、楽しむ国が他に有るのだろうか?
叙情的な秋の花火を低俗なレイブ・パーティーにさせたく無いならせめて、せめて音質に気を配り、花火とシンクロさせてお互いを引き立てるようなプログラムを組め!
湖上に浮かぶ狭い筏の上で絶妙なタイミングで花火を打ち上げる花火師達が可哀想に見えたのは私だけだろうか…。
余韻とともに湖面へ落ちて行く一瞬の命の花火のホシ達。「パラパラパラ……」というその音が騒音にかき消される。
あの日、数千の観客の中に居たであろう幼い子供達の心に刻まれたのは、暗闇と静寂を打ち破り見事に夜空と湖面を染める「どーん……ぱらぱらぱら…」という尺玉花火の音か、
のべつまくなしに流れる聞くに耐えない音質の場違いな音楽か…。
どうかしてるよ、まったく。