electro-harmonix/TUBE ZIPPER

私はエンベロープフィルターは大きく二つの特性に分類している。
ひとつはスラップ等での早いパッセージにも追従しフィルターのレゾナンスをEQやエキサイターよろしく細かいアタックを浮き出させる事も出来る攻撃型
今ひとつは強力なキャラクターでその場を支配してしまうようなアクの強い戦略型
この2タイプはまったく相容れない物ではないのだが、追従性を重視するとフィルター・スイープに個性が薄れて行くのは必然。もちろんセッティングで調整出来る範囲も有るのだが個々に得手不得手があるのは確かなのだ。

今のところ攻撃型の代表は現行MXRのベース・エンベロープフィルター。そして強力な個性で他を寄せ付けない圧倒的存在感を有する戦略型の雄はこのチューブ・ジッパーである。

とにかくフィルター史上最強とも断言出来てしまう程強力な効果とエレハらしいおバカなオマケも付いるホットな奴で、ヘタすればバンド全員を敵に回す程の危険性をも秘めている。

売りである真空管にどれくらいゲインを突っ込むかが使い方のコツなのだが、入力ゲインとマスターボリュームを備えている点が暴力的なコイツを以外と使い勝手の良いマシンにしている。
センシティブ(スレッショルド)は非常に繊細でミリ単位での調整を強いられる。
レゾナンスは3時を過ぎた辺りから「発振」の恐怖を体験できる。「ピュワ〜ンッ」とイノシシのケツにいきなりフォークを突き刺した時の悲鳴のような絶叫! リハ中不用意にこれをやるとバンド全員からしかめっ面を喰らい、本番中だと楽曲崩壊を招く。

ドライブでオーバードライブを作り出せばパーラメントの「Together」のようなゲコゲコフィルターも簡単にシュミレートできるが、ドライブ「0」で入力ゲインをそこそこに抑えると非常にピュアでコクが有ってキレもあるスイープも作れる。

「おバカなオマケ」はモードをトリルにすることで得られる。フィルターが「ホヨホヨホヒ」とトレモロのようにもがきながらフェードアウトして行く……。なっっんじゃこりゃ、である。この効果を巧みに操れる天才プレイヤー、もしくは奇才作曲家の登場を私は待ち望んでいる。

フェルター効果は「ドライブ」共に強力無比だが追従性は決して良くは無い。また強烈な個性を発揮するにはある程度の「時間」が必要なので早いテンポよりも♩=100以下での粘っこいフレーズで威力を発揮すると思う。

しかし奏法に関わらず画一的なピッキングしか出来ないような「素人」はうかつに手を出すのは禁物である。

このチューブ・ジッパー、あまり巷では見かけないのだ。今の所生産は続いているがいつ終了するか…。史上稀に見る名器であることは間違いない! 手に入らなくなってから「伝説」で市場価値が上がるんだろな、これ。
フィルター・ファン(居るのか?)には一度試してもらいたい逸品である。

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